税務調査@

相続税申告に対する税務調査の割合はご存知ですか。

国税庁発表の統計資料「相続税の申告事績及び調査事績」によると、実に3件に1件の割合で調査が実施されていることがわかります。高い確率ですね。

そして、そのうちの約86%で申告漏れが発見され、その課税価格は1件当り3,000万円を超えています。

この事実をご存知の相続人の方はほとんどいらっしゃらないのではないですか。

私が相続税の申告実務をお引受けした際には、このことをお話しています。

そして、自分が現職の時、どのような観点から相続税調査を実施したかについて、経験を基にお話させていただいております。

 

 

きっかけB

資産税部門で相続の調査を行うようになると、さまざまな事案にぶつかることになりました。

形のよい土地というばかりではありませんから、その都度いろいろ勉強して覚えていきました。

そうやって勉強してくと、以前に書きました「財産評価基準」が、あながち勝手なものではない(当たり前なんですが・・)ことが私にもわかってきました。もちろん、この「財産評価基準」は、一律の評価を行うための基準ですから、今でも矛盾にぶつかることも多々ありますけどね。

ですから、当時の担当税理士さんも相当頭を悩ませていたんだろうなと、いまさらながら感じています。

 

中にはこういう事案もありました。(税務署を辞めた立場でも、守秘義務がありますので特定される具体的なことは書けませんけど。)

 

ある会社の社長さんがお亡くなりになった事案です。そこは会社の株式の評価額はほとんどなく、土地が財産の中心となっておりました。

相続税の調査ということで、後を継いだご長男の宅にお邪魔していろいろ調べておりました。土地についても、実際に現地を拝見しました。

家族名義となっている預貯金(この問題は別の機会にお話します。)等、問題点もいつくかありましたが、土地の評価額を検討してみたところ、どうも評価額が高めではないかと感じました。それで先の「評価基準」等をもとに、自分で再評価を行ったところ評価額が大幅に下がり、なんと、こちらが指摘した問題点を相続財産に入れたにしても、まったく「相続税が算出されない事案」であることが判明しました。

 

そこで、上司にその事実を説明しました。

「これは、職権で相続税をすべて返すべきです。」と付け加えましたところ、上司も了解し、相続人の方々に相続税をお返ししました。

こういう事例は、ほんとうに稀です。

通常、税務調査に伺って税金を還付することはありませんからね。でも、こういうこともあるのです。

それほど評価は一筋縄ではいかないのです。

そして、私も段々とこの「評価作業」に興味を抱いていったのです。

 

 

 

きっかけA

法人税の調査を担当する部門から配置換えとなり、国税局の会計課、そして国税庁の会計課と約6年間現場から離れた後、自らの希望がとおり資産税を担当する部門に配置されました。

この部門は、相続税をはじめ特に納税者や税理士の方々からの相談が多い部門です。

と言っても、私は調査担当でしたから、法人税部門の時と同様に毎日調査の日々でしたけど・・。

 

初め、戸惑いまいした。

以前の法人税調査では、「フロー」、つまり損益を中心に調査を行っていたのですが、相続税調査では、「ストック」、つまり資産の把握が中心なのです。

見方がガラッと変わりました。

 

「「儲け」があるから納税。」なら、わかりやすいですよね。

でも、「「資産」があるから納税。」というのは、「ん〜、理屈はわかるけどねぇ・・抵抗あるなぁ。」という感じでした。

 

それも、その資産の中心である「土地」を評価して評価額を出すということで、「値のついていないものに値を付ける。」こと自体に抵抗がありました。

「評価通達(土地などを評価する際に税務職員がよりどころとする基準)なんて、勝手だよな。」

そんな感覚でしたから。(私が勝手だったか・・。) 

 

 

 

きっかけ@

仕事の中で、相続や資産に関する税務にかかわりだした「きっかけ」って何だったろう。

たぶん、あれだよな・・・ 

ふとした時に浮かぶが光景あります。

 

もう20数年前、税務署で、毎日管内の会社に伺って法人税の調査をしている事務官だった時です。

いつものように調査先の会社にお邪魔して、「ここでちょっと休憩ね。」と、調査の合間に社長と顧問税理士と私で雑談をしていた時です。 社長が、

「あのさぁ、ちょっと教えてほしいんだけど。実はね、子供に会社の株の名義を代えておきたいんだけど、そうしたら税金って、贈与税?・・やっぱりかかるのかねぇ。」

 

税務署に勤めているとはいえ、法人の調査しかしたことがない私は正直どぎまぎしました。

「・・・たぶんかかると思いますけどねぇ。ちょっと・・贈与税のことは部門が違うので・・はっきりとはわかりません。」

 

今思うと、とんでもない回答してましたよね。若いというか、おそまつな応対だったと思います。

その社長は、今まさに自分の会社が調査されている状態なんだけど、恐らくずっと抱えていたいわば「個人的な悩み」を、調査にきた私に思いきって聞いてみたんでしょうね。

「あぁ、そうかい・・・。」悩みが解決できない社長の寂しげな思いが残ってしまいました。

 

「あの時、社長の悩みにこたえてあげられなかったなぁ・・。」

これがずっと、私に残ったのです。